展示

木に秘められた精神

19.06.2022 - 16.10.2022

開催: 19.06.2022, 12.00

キュレーター(マンガ博物館): ドミニク・リシク キュレーター(竹中大工道具館): 西山マルセーロ ビジュアルアイデンティティ: マルタ・シュミド
日本の大工仕事の伝統と技

職人仕事を超えて

 欧州にとって長らく謎に包まれていた日本文化は、明治時代(1868–1912)に起こった革命的な変化の瞬間ついに明かされ、その途端に深く練り上げられた美が西洋を魅了しました。島国の、哲学に満ちた美的モチーフが欧州の芸術家の意識に浸透すると、環境形成についての近代的な思考の誕生とともに、西洋人の関心は極東の建築物にも向けられるようになりました。

 フランク・ロイド・ライト(1905)、ブルーノ・タウト(1933)、ル・コルビジェ(1955)、ヴァルター・グロピウス(1954)といった偉大な近代建築の父たちは、相次いで京都近郊の桂離宮を訪問し、その比率や平面構成、モジュールの反復による建築構造に感銘を受けたのです。近代的な秩序の設計者たちは、既存の形式や空間の解決法を、時としてユートピア的なそれぞれの新しい住まい方のビジョンに埋め込みながら活用していました。しかし、日本建築の根幹にあったのはそれとは逆で、近代性への熱狂や革命的な変化の渇望から出てきたものではありませんでした。世界でも類のないこの技の質は、素材とそれを生み出す自然と仕事そのものに対する敬意に満ちた、何世紀にもわたって細やかに受け継がれてきた日本の大工の匠の伝統にこそ裏打ちされていたのです。

 日本のアイデンティティを担う伝統の持続という理想を、見事に組織的に具体化させたのが、神戸にある竹中大工道具館です。この使命を実現させた優れた博物館で、現代の日本人は単に過去の有名な工法を鑑賞できるだけでなく、現代そして未来のよりバランスが取れた環境計画を目指す著しく際立った潜在力も実感することができます。地方に位置し非常に狭い専門的で特殊な分野を極めた博物館ですが、その成果は西洋でも大きな反響を呼んでいます。今回、竹中大工道具館と日本美術技術博物館マンガの協力で、ポーランド国内で日本の比類ない大工仕事の卓越した匠の鑑賞が叶うことになりました。

 クラクフの博物館で開催されるコレクションの概観的展示は、竹中大工道具館の提案により、緩やかに移り変わる8つのセクションから構成されています。技と美の物語は、まず永遠で壮大な自然という素材文化の源から始まります。次いで、建築史、建築の儀式的過程、素材の精神的価値、道具の美、加工と構成の仕組みと続き、多面的な紹介の最後は、場当たり的な発想によらず、深慮され組織立てられた技から生み出される美の実例によって締めくくられています。

 特に日本の意匠や技は、私たちにとってありきたりで直接的なものを越えた向こう側まで、注意深く見ていかなければなりません。日本の大工の抜きん出た手仕事の技量、完璧に設計され常時準備が整えられた道具の精密な意匠と仕上げ、そして純粋に技術的な役割を持つ部分にまで現れる意表をつく美しさについては、いくらでも語ることができます。しかし、素材の文化は、精神性や哲学から生まれる深遠な価値をもたらされてこそ、大きく花開きます。ですから、さまざまな宗教的施設の例や建設儀式の象徴物、そしてヨーロッパ人には馴染みの薄い組み合わせですが、天然素材のあるがままの物性と茶の湯の精神性とを一体化した茶室の展示も大きな意味を持ちます。

 日本では素材が非常に尊ばれ、しばしば神聖な価値と結び付けられています。なぜならその起源は自然にあり、その自然界は千古の昔から超次元的な神々に満たされているとされているからです。純粋に技術的な次元と、世代から世代へと受け継がれてきた知識としても存在する精神的儀式的次元との融合が、このすばらしい伝統を持続させているのです。そこにはきっと今日私たち西洋人も学ぶべきことがあるでしょう。
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